ヒートショック対策を本格的にするためには、家を断熱対策しよう。床、お風呂、家のリフォーム
ヒートショックへの対策は、まず家の中での「温度差」を減らすことが最重要となります。ヒートショックが発生する仕組みや原因については過去の記事をご覧下さい。
住宅内で温度差が出やすい場所とは
住宅内で温度差が出やすい場所は、以下のエリアです。特に、肌を露出する「風呂」や「トイレ」では注意が必要となります。これらの場所を20℃程度の室温へと調整することで、血圧変動のリスクを減らすことが出来るとされています。
- 脱衣所
- 洗面所
- 浴室
- トイレ
- 廊下
- 玄関
家の中全体の寒暖差を防ぎ、快適な室温で暮らせる環境づくりのためには、どのような方法があるのでしょうか。
今回は、リフォームや工事、設備機器設置など、費用や手間はかかりますが、ヒートショックの原因となる「室温差」を防ぎ、一定の温度を保つための方法をご紹介します。
家の中の熱を均一に保つためにできるリフォーム工事
出典:「断熱改修 全体改修と部分改修」近畿大学理工学部建築学科・岩前教授
上記のグラフ「断熱改修の効果:暖房エネルギーの削減」(近畿大学理工学部建築学科の岩前教授)を参考に見てみますと、無断熱(リフォームなし)を100として、改修の事例ごとに断熱化の効果が比較できる形になっています。
快適かつ省エネな住宅にする、3つの断熱リフォーム方法。
「断熱リフォーム」を行うには、通常はリフォーム会社へ依頼します。
断熱リフォームは住宅のタイプ(「従来の工法」の住宅 や「高気密高断熱」の住宅など)で変動するため、まずは家全体でプランニングしてもらい、住宅の状態から「断熱と気密」に対し効率的で最適な効果が得られるシステムを選びます。
その後、「サッシ、天井、外壁、床、家全体」へと断熱改修を取り入れる形となります。
リフォームには大きく分けて3つの方法があります。
- 部屋別に部分的にリフォーム
- 風の出入りが集中する窓・床・天井などをリフォーム、
- 住宅全体をリフォームする、3つの方法です。
それぞれを見ていきましょう!
1.家の中で高リスクなエリア(浴室や脱衣所、トイレなど)を部分的に断熱化する
A.お風呂場と脱衣所をあたためる設備
高血圧の人や高齢者の方は、脱衣所を入浴前に20℃前後に暖めておくことがヒートショック対策に有効とされています。浴室暖房乾燥機があれば、入浴前に浴室内全体を暖めることができます。脱衣所暖房やヒーターと組み合わせることで、服を脱いで裸になり、浴室に入って浴槽に浸かるまでに冷えることがなくなり、身体への負担が大きく軽減されます。
B.トイレでの暖房器具の設置
冬場はトイレの回数も増え、高齢者は夜中に起きることもあります。寒さの中で肌を露出するトイレでは、暖房やヒーターで空間を暖かく保ち、洗浄は温水機能を使い、いつでも温もりのある暖房便座を取り付けることで、急激な温度差による負担を防ぐことができます。
浴室・脱衣所・トイレで工事が必要な主な設備
【浴室】浴室暖房機・浴室床暖房・浴室断熱リフォーム
【脱衣所】脱衣所暖房機・脱衣室床暖房・脱衣所ヒーター(床置きタイプは工事不要)
【トイレ】温水洗浄機・暖房便座・トイレ室内暖房・トイレ床暖房・人感センサー付きトイレ用ヒーター(置き型タイプは工事不要)
これらの設備は設置工事が必要となりますので、設備に応じてリフォーム会社や設備業者、電器店やガスショップへ依頼となります。
※浴室、脱衣洗面所、トイレをまとめて室内暖房、床暖房にする設置方法もあります。
2.窓や床、天井など部位的に断熱化する
床や天井には断熱材を施工します。
窓の場合、断熱ガラスや断熱サッシへ交換、または現在の家にある窓にもう一枚サッシ窓を取り付けて二重窓にするなどの方法があります。樹脂製の窓は熱の伝わりにくさ(断熱性)がアルミの1000倍と言われており、二重窓の場合は、二枚になることで窓と窓の間に空気層ができ、熱が伝わりにくくなることで断熱効果を高めます。
画像:浴室の断熱工事の様子(UBの回り・天井全部に断熱施工をしています)
画像:床下の断熱工事(床下からの熱の流入・流出を防ぎます)
3.住宅全体を断熱化する
ヒートショックを防ぐ面でもっとも効果的なのは、家全体の断熱性を高め、浴室やトイレを含む家の中全体を暖かな状態に保ってくれる「温度のバリアフリー」状態にすることです。
家の中の温度差は住宅自体の断熱性に大きく左右されるため、外気温の影響を受けにくい高断熱の居住空間にリフォームすることで、家の中全体の寒暖差を減らし、部屋間での温度差が主な原因とされるヒートショックから身体を守り、安全に暮らすことができます。
高気密・高断熱の住宅なら「全館空調」も
「全館空調」とは、1台の空調で家全体の温度をコントロールし、冷暖房、除湿で快適な室温に保つことが出来るシステムです。部屋間の温度差や室内の温度ムラが少なくなり、寒さに震えることなく「浴室やトイレ⇔リビングや寝室」と快適に移動できるようになります。
住宅全体でのシステム化を行うため、通常は新築時に設計の時点でプランニングする形となりますが、近年では既存住宅のリフォーム工事も登場しています。
画像:2階寝室の外周部分の断熱工事の様子です。天井にも断熱施工します。
画像:今まで断熱されていなかった家に断熱材を施工しています。
ヒートショックが起きたらどうすればいい?
もしもお風呂やトイレでヒートショックを起こしてしまった人を発見した場合は、以下の対応を行います。
- 浴槽内に沈んでいる場合には、浴槽内の栓を抜き排水する
- 他の家族や隣家の方など人出を呼び、浴槽内から引き上げる
- 119番通報をして救助を求める(通報時に受信者から処置等について指導があります)
- 呼吸をしていない場合、胸骨圧迫と人工呼吸で心肺蘇生を行う
高齢者の方や疾患を持つ人が家族にいる場合には、入浴時に注意する点などについて理解を求め、住宅の状態に合った「家全体で考えるヒートショックへの対策」を行いましょう。
室内の温度差を減らすことや、そのための断熱リフォームや暖房機器の設置など、家族みんなで予防や対策へ取り組むことで、ヒートショックへの危険性を大きく減らすことが可能となってくるでしょう。